道草手帖

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小川洋子 『密やかな結晶』  

100901dieRutschenbahn


この島から最初に消え去ってしまったものは
何だったのだろうと、時々わたしは考える。

「あなたが生まれるずっと昔、ここにはもっと
いろいろなものがあふれていたのよ。
透き通ったものや、いい匂いのするものや、
ひらひらしたものや、つやつやしたもの……。
とにかくあなたが思いもつかないような、
素敵なものたちよ」

子どもの頃、
そんな物語を母はよく話して聞かせてくれた。

「でも悲しいことにこの島のひとたちは、
そういう素敵なものをいつまでも長く、心の中に
とどめておくことができないの。
島に住んでいる限り、心の中のものを順番に
一つずつ、なくしていかなければならないの。
たぶんもうすぐ、あなたにとっての最初の何かを
なくす時が、やってくるはずよ」



何もいらない……

そう思う一方で
何よりも失うことを恐れている。

まるでそんな私の心を
見透かされているかのように
物語は進んでゆきます。

ものを失ってゆく人たちの物語。
そのものとともにある思い出も
失ってゆきます。

心の中に空洞が増えてゆく人たち。

けれど
誰もそれを食い止めることなどできず、
ただ事実を自然に受け止めてゆくだけ。

たとえ
それがいかに大切なものであっても……

思わず
「ほんとうにそれでいいの?」
と主人公に問いかけたくなりました。

それが無理なことだとわかっていても
あまりにも切なくて悲しかったのです。


密やかな結晶 (講談社文庫)密やかな結晶 (講談社文庫)
(1999/08/10)
小川 洋子

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